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クラス:アサシン 属性:中立・善 真名:赤坊主 出典:閑窓自語 地域:日本 性別:男 身長・体重:187㎝・98㎏ ステータス:筋力C耐久B敏捷C+魔力D幸運B宝具C クラス別スキル 気配遮断(B) サーヴァントとしての気配を絶つ。 完全に気配を絶てば発見することは非常に難しい。 保有スキル 単独行動(D) マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。 ランクDならば、マスターを失っても半日間は現界可能。 怪力(C) 一時的に筋力を増幅させる。魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性。 使用する事で筋力をワンランク向上させる。持続時間は“怪力”のランクによる。 戦闘続行(B) 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。 魔力放出〔炎〕(E) 武器ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出することによって能力を向上させる。 アサシンは炎を纏うが、放出量が低い。 宝具:『屏風裏吉事有』 ランク:C 種別:対人 レンジ:1~3 最大補足:10人 屏風を召喚し、背後に移動する。 屏風自体の耐久は高く、Cランクの対人宝具までならば耐えることが可能。 屏風よりアサシンの姿を視覚した味方に幸運を与える。 名前
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【元ネタ】戯曲『マクベス』 【CLASS】アサシン 【マスター】 【真名】マクベス 【性別】男性 【身長・体重】 【属性】中立・悪 【ステータス】筋力D 耐久D 敏捷D 魔力D 幸運E 宝具C 【クラス別スキル】 気配遮断:C サーヴァントとしての気配を絶つ。隠密行動に適している。 完全に気配を断てば、発見する事は難しい。 【固有スキル】 騎乗:C 騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、 野獣ランクの獣は乗りこなせない。 話術:E 言論によって人を動かす才能と技術。 他人に罪を着せ、それを周囲に納得させる事ができる。 【宝具】 『王冠奪いし血塗れの短剣(レディ・マクベス)』 ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人 自身が仕える王であるダンカンを暗殺し、王位を簒奪した逸話の具現。 この宝具を用いて他サーヴァントの霊核を破壊し消滅させたとき、そのサーヴァントのクラススキルを獲得する。 既に修得しているスキルである場合はランクが高いものを優先する。 ただし、修得できるスキルのランクは最大でBランクまでとする。 『破滅の天命(ウィッチズ・リード)』 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人 三人の魔女による予言。予知というよりは、もはや未来の決定に近い。 アサシンが望むタイミングで、未来に関する断片的な情報を得られる。 ただし、この宝具を使用した時、アサシンはE-ランク相当の「精神汚染」スキルを獲得する。 この「精神汚染」スキルは時間の経過、またはこの宝具を使用する度にランクが上昇していく。 【解説】 ウィリアム・シェイクスピアによる戯曲『マクベス』の登場人物。 スコットランドの将軍であったマクベスは、ある時三人の魔女と出会う。 魔女たちは「コーダーの領主となる」「いずれ王になる」と予言し、実際にマクベスはコーダーの領主に任ぜられる。 予言が実現した事に驚いたマクベスは、王になるという野望を取り付かれ、妻と協力して王を暗殺する。 そうして王となる事に成功したマクベスだが、良心の呵責と未来への不安から、次第に精神に異常をきたすようになる。 再び魔女たちに会ったマクベスは「女の股から生まれた者には殺されない」「バーナムの森が動かない限り安泰である」との予言を得る。 侵攻してきたイングランド軍が城に迫ってもその予言を信じ続けるマクベスだったが、 イングランド軍が枝を隠れ蓑にして移動している――バーナムの森が動いたとの一報を聞き、自暴自棄となる。 最後は、母親の腹を破って生まれてきた(帝王切開)ファイフ領主マグダフと戦い、敗死した。
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クラス:アサシン 属性:混沌・悪 真名:アハ・イシュケ 出典:伝承 地域:スコットランド 性別:男 身長・体重:160~200・100㎏ ステータス:筋力B耐久C敏捷B魔力D幸運B宝具C クラス別スキル 気配遮断(E) サーヴァントとしての気配を絶つ。 アサシンであるが、宝具の効果によって気配遮断のランクが低下している。 保有スキル 粘着の皮膚(A) 粘着性があり、触れると離れることが出来なくなる皮膚を持つ。 アサシンの場合、背中の皮膚にのみ粘着質である。 食人馬(B) 人を喰らう馬。 アサシンは肝臓のみ残して食べる。 伸縮する背(A) 自在に伸び縮みする背中を持つ。 最大で子供が7人乗ることが可能な程に背中を伸ばすことが可能。 宝具:『湖中で喰らう怪馬(カニバリズム・ケルピー)』 ランク:C 種別:対人 レンジ:1 最大補足:7人 背中に人を乗せた瞬間に湖に飛び込み、湖の中で肝臓以外を喰らう。 背中に乗った者は離れることが出来ずにそのまま死亡する。 この宝具を使用する際に姿を現さなければならないため、気配遮断のスキルが上手く発動できない。 名前
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クラス:アサシン 属性:秩序・善 真名:安斎都 出典:アイドルマスターシンデレラガールズ 地域:日本 性別:女 身長・体重:156㎝・41㎏ ステータス:筋力E耐久D敏捷C魔力D幸運A宝具B クラス別スキル 気配遮断(E) サーヴァントとしての気配を絶つ。隠密行動に適している。 保有スキル 単独行動(B) マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。 ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。 推理力(D) いくつかのものから犯人を暴く推理力。 しかし、経験不足によりほとんど外れてしまう。 推理続行(A) 推理が外れようとも諦めないガッツ。 推理が当たるまで、戦いよりも推理を優先する。 仕切り直し(C) 戦闘から離脱する能力。 宝具:『証明する貴方の罪(プルーフ・クライム)』 ランク:B 種別:対人 レンジ:0 最大補足:1人 証拠をいくつか手に入れたことにより発動する対象の名と罪を暴く推理。 自身に対して魔力判定を行い、成功した場合に対象の真名を暴くことが可能。 しかし、失敗した瞬間その対象に対して宝具を行使できなくなる。 名前
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終章 後編『杜王町に舞う風』 「あ、やべ、酔った……」 「飛行機酔い……ですか」 パッショーネの手配したマンション。 手回しも既に済んでいる。 当分は生活できるであろう大金、生活道具を持って入室。 フーゴが靴をきちんと並べるのに対し、ナランチャは普通に靴を放り投げた。 しかし、フーゴは注意しない。なぜなら 「フーゴ……寝ようぜ」 「そ、そうですね」 ここに来るまで、緊張と不安で寝られなかったナランチャたち。もう一刻も早く、睡眠を取りたかったのだ。 風呂はイタリアで入ってきた、布団を敷いて即寝る。 「うおー、何か急に興奮してきた。学生さんって感じだよなァーッ」 「いいから寝てくださいよ……って、何ゲーム機持ってきてるんですか」 「10分やると赤ん坊のようにストレスを残さず目を覚ませるんだよ」 「あ、そうですか……じゃ、僕はもう寝ます」 一足早く眠りに着くフーゴ。一方、ナランチャは。 「うおおぁ!しまったッ、ゲッターがッ!」 ………。 それはさておき、朝。 ナランチャの通う高校は"ぶどうヶ丘高校"。あるパッショーネの幹部は「手続きやなんやらを全て任された。給料も減った。どうでもいいが4は嫌いだから高校が3年間なのはいいことだ、だが大学は(略)」と語っていた。 初めて袖に腕を通す学生服。嫌でも緊張せざるを得ない。 「はーッ、はーッ」 「ナランチャ、息が荒いです。早く行きましょうよ、遅刻します」 フーゴは自由行動だが、だからといって喜ばしいと言うわけではない。 自分もある程度日本語を覚えた(教えていたので当然だが)が、行く当てもないのだ。 部屋で何百回ため息をついただろうか。そんなフーゴを他所に、ナランチャは学校へと向かっている。 道中、犬に噛まれたのでエアロスミスの機銃を足に掠らせてやった。 流石に直撃させる気はなかったが、それだけで犬は逃げていく。 去り際に石を投げつけると、蹴り返されて額に直撃した。自業自得である。 「それでは、転入生を紹介します」 メガネをかけた女性の教師が、高校3年B組の教室で話を始めた。お前らは腐ったみかんだ!(?) まあ、教室は普通の雰囲気だ。なんとも普通。 特徴を探す方が難しい。ないわけではないのだが。 生徒同士がどんなヤツが来るのかとか喋っている中、生徒である広瀬康一は、なんとなく不思議な物を感じ取っていた。 (なんだろう……まさか、転入生の子……) まさかね、と自己完結しかけて、ドアが開いた。 「ナランチャ・ギルガ君です」 「外国人?」 「イタリアから来たらしいですよ、くれぐれもいじめたりしないように」 「………」 ガッチガチ。 硬直して直立しているナランチャを、康一は微笑ましい様子で見る。 まあ、外国人だし、無理もないな、と考えていた。 そして、もう一つ感じ取った事。 それは、目の前の少年がスタンド使いかもしれない、ということ。 (ふー……軽くルイズに抱きついた時の緊張を超えたな。死にそうだ) 席に座って、一息つく。 これは早急に慣れないといけない。毎日心臓が発作しそうになったらたまらない。 だが、多分、しばらくはこの緊張感と共に学校生活をすごすことになるだろう。 馬鹿にされるのは別にいいが、まさかいざ学校に通うとなると、ここまで緊張するとは思わなかった。 パッショーネの、ある財団並の手回しにより、一応向こうの学校からこっちの学校へ『転入』したことになっている。 一人で唸っていると、急に肩を叩かれたのでビクッ、と反応して振り返った。 「ねえ……君、もしかして……」 「……え?な、何?」 「……スタンド使いだったりする?」 ええ、もちろんこんなに早くスタンド使いだとバレるとは思いませんでしたbyナランチャ 何故、このときばかり、康一はストレートに物を言ってしまったのだろうか。 一般人だったらどうするつもりだったのか、それは不明である。 唐突に飛び出した必殺ブロー。会心の一撃!ならんちゃは9999のダメージをうけた。ならんちゃは しんでしまった! おおならんちゃよ しんでしまうとはなさけない! バレるんなら偽名を使うべきだったなぁ、と後悔。 心臓が月までぶっ飛ぶ衝撃を受けたナランチャは、危うく卒倒しそうになりながら―― 「あ、あれか。お前もスタンド使いだったり……」 「う、うん。まあね。今日、一緒に帰る?」 「おう、俺としても友達は早いとこ作りたいしな」 「というか、日本語偉く上手いね」 「まあ……ちょっとした地獄を見た」 「へえ……」 地獄=数千回の「ド低能がァーッ」 いきなりスタンド使いと会ってしまった。 一応『任務』として、スタンド使いの調査が入っていたからありがたい。 僅かに笑う康一。つられて笑うナランチャ。 いい性格で、誰からも好かれそうなヤツだというのが、ナランチャの第一印象。 これはチャンスだ。 芋づる式に、ここからさらに友達の人数を増やしていけるかもしれない。(スタンド使いの人間をもっと見つけられるとは考えないのだろうか) しかし、授業では散々であった。 いや、「これがいいんですよ、これが!」とかナランチャは言っていたが、彼のノートに書かれた『おかっぱのヒーロー』を見て、康一は苦笑した。 ちなみに内容を理解する事は全く出来なかったという。 大体、一日目から授業とは。 始業式の時期にあわせてくれよ、とナランチャは思った。 (ふふ……時差を考えれば、今頃初っ端から授業で困ってる頃でしょうね……康一君には会えましたかね?) ジョルノは、笑った。 極めて邪悪な笑みで、側にいたトリッシュは沈黙するしかない。 ミスタはまだ卒倒していた。 「えぇ?ナランチャ君って……親いないの?」 「ああ……今は、2人暮らしかな、フーゴってやつと」 「大変なんだねぇ……僕じゃあ想像も出来ないな」 「あ、そうだ。スタンド、見せてくれねーか?」 結構過去の事とかは普通に話しちゃうナランチャ。警戒心ナッシング。 そしてスタンド使いに「スタンド見せろ」って話しかけちゃう。おい。 少しだけ顔を下げて歩いていた康一は、顔を上げた。 これで一応スタンド使いの調査は済んだ(夏休みの宿題を一つやりきった気分)。 一人しか調べられてない。いいのかナランチャ。 「うん、別にいいけど……」 「俺も出すからさ」 少し精神を集中する。 精神力が具現化し、エアロスミスの戦闘機のようなフォルムが、スタンド使いの康一にははっきりと見えた。 空中で静止したエアロスミスを、下から上から右から左から、全方位から眺める康一。 「うわあ……これ、戦闘機?」 「まあ、な。一応戦闘向き。二酸化探査も探知できる」 これ一般人が聞いたらわけが分かりません。 包み隠さず特徴を言うナランチャに、康一は敵意を全く感じない。 やんちゃな青年、といったところだ。 自分も、スタンドを出す。 せっかくなので、『エコーズACT3』を出した。 「オ呼ビデスカ……?」 「うお、喋った!」 「うん、僕は三つ使い分けられるんだけど、どういうわけかコイツだけね……」 「み、三つって……」 人型スタンドには慣れている。 しかし、複数の能力を持っているスタンドなど、相当珍しいだろうとすぐ分かった。 エコーズの能力自体が『成長』と考えれば、能力は何とか一つに収める事が出来るかもしれないが。 「そういえば、イタリアかァ……僕も行った事あるよ」 じろじろACT3を見つめていたナランチャの首が再び康一の声のするほうへ向いた。 内心「それはもしかしてパッショーネのこととか知ってたりして?」とか思っている。 ドキドキしつつ、二の句を告げる康一に視線を向けていた。 しかし、右手は自動販売機に金を突っ込み、サイダーを取り出していた。 ゴクゴク喉を鳴らす。落ち着けるためだったかどうかは知らないが。 ジョルノはこうやって心臓に悪いことを俺に味わわせる為にここに送り込んだのか?という疑問が浮かぶ。 「ジョルノ君っていう人……ちょっと用があって、会いにいったんだ」 サイダーを吹いた。 幸い康一はかわしたが、すかさず誤魔化しを入れる。 何か知らないが、急に「この台詞を言わなくてはならない」みたいな感覚が来た。 「エ……」 「え?」 「エメラルドスプラッシュ!」 「?」 自分でも何を言っているのか分からず、もっと収拾がつかなくなっている気がする。 「心臓の音、凄いよ?もしかしてナランチャ君ってさ……」 駄目押しとばかりに、視聴覚を持つACT1で心臓の音を察知されてしまうド低能君。 足が震えてくる。 一応任務だ。ということを思い出す。バレたら即消されるんじゃね?とか、万が一の時。 正直ジョルノに勝てる自身はない。 もしもだ。もしもだが。可能性は低めだが。 レクイエム出されると大冒険の世界へ行かなきゃならなくなる。 的外れな心配ではあるが、日本語をまあまあ覚えたとは言え如何せん『ナランチャなので』。 ただ、強制帰国とかはありえるかも、とやっと現実的な思考に帰ってきたナランチャは、たった一日でオサラバですかーッ!?とか、今にも白目剥いて路上に倒れそうであった。 「ジョルノ君と知り合い……てことは」 「そ、それ以上言うなッ!」 「……うん、もうなんとなく分かったから。これ以上は言わないよ」 ナランチャ自爆。 康一君がある人物からも『好かれやすい性格』と言われたり、頼りにされやすいのは、やはりこういう人の良さもあるのだろう。 数年前の『ある事件』でも勝利への切欠を作り上げたのは、康一だった。 成長のスタンド――エコーズが現すように、彼もその事件を境に成長していった。 『それ以上言うな』が鍵となり、ナランチャがパッショーネの一員だと言うことをうっかり知ってしまった康一。 結果として、ナランチャが勝手に墓穴を掘っただけであった。 学校に通っていると言う実感は、ナランチャの注意力を一時的にとは言え、凄まじく散漫にしているのである。 「……お、康一ィ」 ふと。 微妙に間延びした声が後ろから聞こえた。 康一に秘密を知られまくって敏感になっていたナランチャはバッと後ろを向いた。滑稽だ。 俗に言う、リーゼントの男。背は康一やナランチャと比べると相当高い。 その横にはハンバーグ頭の男。こちらも大きい。 なんとなく、それほど年は離れていないはずなのに、妙な貫禄と威圧感を感じる。 「あ、仗助君と億泰君」 「………」 仕方なかったのだ。 初対面だったら殆どの人はそう思うだろうし、何の前情報もなく、ナランチャのような性格を持った人間や、そこらの不良なんかでも言ってしまうかもしれない。 ただ、『彼』の場合はそれが『禁句』であって、力も相当なものだったから、こそ。 『彼』は、初対面の者には『試練』として立ちはだかる確率が非常に高く、下手すれば大怪我を負うかもしれない。 それでも、言わずにはいられなかった。 「あのさ、ナランチャ君、髪の事は言及しないほうが」 「変な髪形だな、オイ」 ザ・ワールド。 5秒間時が止まった。 そう。 ナランチャ・ギルガは、その『試練』に片足どころか全身突っ込んでしまったのであった。 「おい、じょ、仗助ェー……いや……わ、悪気なさそうだしよォ?ゆ、許してやっても」 「………」 億泰は必死で仗助を説得する。 しかし、既に彼はバーサーカーと化していた。康一は冷や汗を掻き、叫ぶ。 「な、ナランチャ君ッ!逃げてッ!」 「あ?」 「オイ……今、俺の髪型の事、なんつった?」 億泰も必死で叫ぶ。体を掴み、止めようとするも弾き飛ばされた。 「に、逃げろオメェェーッ!」 地に膝をついた格好のまま、億泰がいよいよ鬼気迫る表情で叫んだ。 「え?え?」 「うわああ!ACT2!」 ACT2で「ドヒュウゥ」の文字をナランチャに貼り付け、吹き飛ばす。 仗助がプッツンするのと、それはほぼ同時だった。 「この俺の髪型が……サザエさんみてぇだとォーッ?」 止めるべく、ACT3を出す暇がなかったために、ACT2が仗助に「ピタッ」の文字を貼り付けようとするが、全て避けられた。 億泰も止める為に「ザ・ハンド」を待機させる。 「確かに聞いたぞ、コラァァァーッ!!」 もうこうなれば止められない。 仗助のスタンド「クレイジー・ダイヤモンド」が地面を打ち、加速する。 盛大にジャンプして、空からナランチャに向かった。 風を切って進む屈強な男に、エアロスミスの銃口を向けて威嚇射撃。 当たらないように撃った弾とはいえ、全て弾かれた。 「どこに行きやがるッ、このスッタコがァーッ!!」 ドヒュウゥの効果が続き、どこまでも吹っ飛んでいるナランチャのつま先に、クレイジー・ダイヤモンドの拳がかする。 バチュンッ、と銃弾でも掠ったかのような音の後。 地面が盛り上がり、コンクリートの路上が吹っ飛んだ。 「うええぇぇーッ!?」 「この頭を貶すヤツは、何モンだろうと許さねェーッ!ドララァーッ!」 「うおおぉぉーッ!エアロスミスーッ!」 今度は手加減なしの機銃掃射を行なうが、何事もなかったかのように、クレイジー・ダイヤモンドが薙ぎ払った。 何度撃っても、何度撃っても、弾かれ、掴まれ、消えていく。 「は、反則だァーッ」 「ドラララァーッ!」 クレイジー・ダイヤモンドが路上から盛り上がった岩をナランチャの向こうへ投げると、着弾点がまた盛り上がる。 その着弾点の岩が宙に吹っ飛び、ナランチャに激突した。 追撃と言わんばかりに、岩を取った場所にクレイジー・ダイヤモンドの拳を触れさせる。 修復され、投げた岩が欠けた部分に嵌るため、戻ってくる その戻ってくる途中、ナランチャを巻き込み、つれてきた。 「あぁ、ヤバイッ!」 ドヒュウゥが解除され、ナランチャの目の前には仗助がいた。 ACT3を出し、超重力で止めようとするも、距離があって届かないのでACT2でまた「ピタッ」を撃つが、また避けられた。 仕方なく「ドッグォン」をナランチャに撃った。 「へ?うおぉッ!?」 爆発の勢いで吹っ飛ぶナランチャ。そこへすかさずドヒュウゥを撃ち、距離を大幅にとるが、仗助はクレイジー・ダイヤモンドで跳躍、普通に追いついてしまった。 「ドララァーッ!」 「早かったな、俺の死も」 完全に回避不可能な一撃。 しかし、救世主降臨。 「ザ・ハンドォッ!」 億泰である。ここぞとばかりに空間を削る。 ガオン、という独特の音が響く。何回もその場で素振りする。 その瞬間、空間が削り取られ、仗助の体とナランチャの体、同時に至近距離までも引き寄せられた。 そこに康一がACT3の超重力を、仗助に叩き込んだ 「ぐあああ……」 「ふ、ふゥ~ッ、よかったぁーッ、止まったよォーッ」 「……オイ、そこの。これからは気をつけろ……」 ナランチャは絶句していた。どうでもいいけど歯が立たなかったね。 (……ジョルノ、俺、他の学校に通いたい) その後、家でフーゴに散々愚痴った。 「あー……昨日はすまねェ。ちょーっと、加減が、な」 (ちょっと?) 次の日の帰り道、仗助、億泰、康一と共に歩く。 謝罪を受けたものの、暫く仗助への恐怖は消えないだろう。 ちなみに勉強はゆっくりと教えてもらっている。 「はぁー……クソッ、暇じゃねぇかァー、康一ィーッ」 「まあ、そうだね、刺激がないって言うのは、確かかもしれないけど」 「刺激なら昨日たっぷり味わったぜェーッ……」 (ホントだよ……) 「そだね……じゃあ、行く?」 そういった康一に、仗助と億泰が露骨に「嫌だ」と訴えかける顔をする。 ナランチャは何のことやら分からないが。 あそこは刺激がありまくりだ。だが、仗助ほどではないかもしれないが、危険である。 「露伴さんのところへ、しゅっぱーつ」 康一がわざと気の抜けた声を挙げる。 嫌々ながらついて行く2人。 何のことか分からないがとりあえずついて行く1人。 康一君、何だかんだで1年に何十回も行く。そりゃあもう、行ったら刺激ありまくりですから。 羨ましいと思う人は少ない、何故か。 岸部露伴―― ある意味人間やめてる。彼は人ではない、『漫画家』だ。 と言うのは言い過ぎかもしれないが、本当にそれぐらいの入れ込みようである。 蜘蛛を舐める?それぐらい普通ですが……。 というか、何をしに行くのかさえ決まっていない。 ナランチャを案内する、という名目だが、そのために何をするのかも特に決まっていなかった。 「ああ?なんだ、君達か……見ない顔も居るようだね」 「ろ、露伴先生、アレを使うのだけは」 「ヘブンズ・ドアーッ!」 「………」 スタンド使いの人に嫌われますよ、露伴先生。 とは言うけれど、内容を読み終わった後は『今起こったことを全て忘れる』を書き込むのでノープロブレム!じゃねぇよ。 体の一部を本にされるナランチャ。 康一は固まった。恐らくパッショーネの一員であることも書いてあるだろうからだ。 (露伴先生、いきなりですけどごめんなさいッ!) 「ACT3 FREEZE!」 「うおぉッ!?こ、康一君ッ!?」 露伴がヘブンズ・ドアーを解除する一時間後まで超重力は続いた(一時間解除しなかったのは漫画のネタにするためにも絶対に見たいという『意地』からである)。 仗助と億泰は康一が慌てて明後日の方向を向かせたので大丈夫。 一応サインを貰ったナランチャ。全然嬉しくなかった。 (どうせならアラキピロピコのサインが欲しかったなァ) 今日の露伴:ムカデ、ゲジゲジを舐めた。 上記の通り、ムカデやゲジゲジが侵入したので舐めた。それはもいベロンベロン。 ついでにペン先で裂く露伴先生。 殺虫剤もかけてみる露伴先生。 クラフト・ワーク。全員がその場で硬直。 でも、それがまた面白いのである。 露伴が何をするのか、何を言い出すのかが(すっかり動物扱いなのは触れてはいけないところだ)。 ヘブンズ・ドアーを恐れ、康一とナランチャは一足先に帰る。 後ろで聞こえる悲鳴。君たちのことは忘れないよ。 今度こそ本当に帰路へつくナランチャ。 ドアを開け、そこには寝ているフーゴの姿があった。 「ん……分かりました」 このマンション、風呂はない。 その代わり、近くに銭湯があるので、そこを使うことになっている。 小銭と道具を持っていき、ダッシュ、ダッシュ。 休みたい、休みたい、休みたい。 疲れを取りたい、風呂に入りたい、寝たい、寝たい。 こんなことがこの後10日も続くと、フーゴはちょっと鬱になってきていた。 「うぅー」 湯船に浸かりつつ、2人はうめき声を上げる。 フーゴは散歩の途中、誰かを探し回っていた女性にぶつかり、手をすりむいたのでそのことを言っていると、その内逆切れされ、その女性の髪の毛が襲い掛かってきた。 後、また人にぶつかって、今度は自分が悪かったので罪悪感を持った瞬間『錠前』が以下略。 そして、もう1人の自分を作り出すスタンドになぜかインネンをつけられ以下略。 ジャンケン申し込まれてスタンド吸い込まれそうになり以下略。 鬱になって以下略。 一応ナランチャもナランチャで結構苦労しているのだが、この件を境にフーゴが外に出ることは少なくなったと言う。 「フーゴ……すげぇ傷だらけじゃん」 「少しハプニングがですね……フフフ……夜にウイルスを全部ばら撒いてやれば、自分もろともこの町は……フフフフフ」 「フ……フーゴ……?」 それ以上は何も喋らない事にした。 家に帰るなり、またフーゴは布団に包まった。 自分も少しテレビを見てから寝よう、と思う。 あたりは全くと言って良いほど静かで、不気味ささえ感じられる。 とりあえずもう電気を消して、布団に潜り込む。 静寂。今日は眠れない。 ごしごしと、目を擦ると、液体が手についたのを感じた。 「……?」 何故か、涙を流していた。何の前触れもなく。 学校生活は楽しいし、危険な目に会ったこともあるが、それなりにスリリングな毎日だ。 文句などない。無いのだが。 胸にポッカリと穴が開いたようだった。 失ったものがまたあることを、悟る。 ルイズ、キュルケ、タバサ、ギーシュ。コルベールや、オスマン、マリコルヌ、シルフィード。 『あの世界』で得た物、それを、自分は確かに捨て去ったんだな、と実感する。 まだ数日だが、この生活も悪くない、しかし、あちらの生活も、悪くない。 両方を取る事は出来ない、なら、元々この世界の住人である自分は、ここに居るべき人間なのだ、と思いなおした。 不意に、窓が揺れた。 「なんだ?」 カーテンを開けるが、一瞬影のようなものが見えただけで、何も居なかった。 だが、どこか懐かしい雰囲気だけが、その場に漂っている。 「………」 それが誰か、今は気にしない。 居るかどうかも分からないのだから。 それから一ヶ月。 事件らしい事件もなく、普通の生活を送っていた。 スタンド使いの調査、とは言うものの……日常生活で垣間見える程度の能力しか把握できず、任務放棄と言っても差し支えない。 今日は土曜日と言う事で、仗助とナランチャは2人きりで歩いている。 「仗助ェー、ラーメン食いに行こうぜ……」 「おう……つーかよぉー、退屈だな」 「そうか?俺はまあまあ楽しいけど」 「平和はいいことだぜ?今も楽しいっちゃぁ楽しい。だけどよ、それとは別になんか変化が欲しいよなァー」 「俺は十分新鮮だよ、こういう生活がさぁ」 「……なんか買おうかな。やっぱ自分で変化を作るのがいいと思うのよ、俺ェ」 結局、何を話すかと思えば行き着くのはそれだった。 しかし、仗助の所持金は12円。 ナランチャの所持金――パッショーネからの援助で2万円。ミスタが……。 そしてなんと言う差……。 ナランチャはラーメン屋に行く途中でゲームを仗助に買ってやった。中古で安いヤツだ。 それでいいのか仗助。 そもそもやるのか仗助。 大体買うなよナランチャ。 買ったのはポケモ(以下自主規制) その後もラーメンをナランチャがおごる。あまり金を使いすぎるなと言われただろうに。 立場が逆転しつつあるのを、仗助は気づいていなかった。 「ふぅッ、どっか寄ろうぜ」 「何回目だその言葉」 「しかたねーんだよ……そうだな、明日トニオさんのところ行くとして……」 「ああ、俺主催のアレか」 「公園でも行くか、公園」 言ってる間に、目の前からは子供達が挙げる甲高い声が響き渡っている。 木陰のベンチに座り込む2人。 まだ5月辺りだが、ぽかぽかした陽気で非常に気持ちがいい。 おまけに木陰が妙に涼しいと来たもんだ。 眠くならないわけがなく、仗助は早々に眠りこけていた。 ナランチャも半眼のまま、ベンチに身を任せている。 だが、1人の少女を見て目を見開く。 「ルイズ……じゃなかった」 その少女は向こう側のベンチに座っていた。 ルイズに非常に良く似ているのだが、髪が黒い。 やがてその少女もベンチを立ち、公園から出て行ったが、ナランチャの感傷をさらにひどくするには十分である。 「ううん……別にこっちへ来て欲しいとは思わないんだけどなァ。どうも、最近の俺はおかしい気がするぜ」 そのうち、まぶたがストーンと落ちてきた。 2時間後、先に起きた仗助に起こされることになる。 刻々と変化していく自分の心情に悩まされつつ。明日の出費に頭を悩ませるフーゴを宥めるナランチャ。 そして、また翌日。 「ようこそ、オ待ちしておりマシタ」 「うぃーす、トニオさん。言っとくけど……」 「ワカッテマス」 そして、外食と言う事でナランチャ、フーゴ、仗助、康一、億泰がトニオの店、トラサルディーに集まっていた。 親には了解を得ているようだが(億泰以外)、もちろん何事かと殆ど全員親に疑われたのは無理もなく。 そこまでするか?と言った感じではある。実はナランチャ主催。 何故断らなかったか?全員刺激に飢えていたからだ(ナランチャ以外) 「よし、トニオさん。『アレ』を……大変な事にならなけりゃ良いんで」 「確かに承りマシタ」 仗助は一応、トニオのスタンドを知り尽くしていると言うわけではない。 だが、効力は『思い知らされている』ので、さぞ面白い事になるだろうと画策していた。 その後、抑え目とは言ったにもかかわらず、涙が止まらない、内臓が飛び出る、肩から垢が大量に出る、などなど。 阿鼻叫喚でなかなか楽しい(?)パーティーにはなっていた。 ナランチャは大笑いしていたが、康一、フーゴは引いている。 「うんまァーいッ!」 億泰はもちろんガブガブ喰ってあのリアクションを連発することに。 彼は下手なグルメリポーターを越えている。 「いや、やっぱりグレートっすねェー」 1人だけ『パール・ジャム』抜きの料理を食っていた仗助は康一とフーゴから視線が集中していた。 (……チェッ、盛り上がってんだから余計な事考えるなよ、俺) ナランチャは、「もしこの場にルイズが居たら」と、幻想していた。 何か一つが自分の生活から欠けるだけでも、物足りなさを感じる。 「ここにルイズが居たら」「キュルケがあんな時に居たらどうなるだろう」 とか、考え始めたらキリがない。 どう考えても、友達は多い方が楽しい。 アバッキオを失ったときも、しばらく何も考えられなかった。 立ち直るまで少しだけ時間を要したが、それを乗り越えて成長出来たと実感している。 だが、ルイズたちは死んでいない。生きているのだ。 それ故、思いを振り切れない。 しかし、今の自分には新しい仲間が居た。学校に通える。 ルイズのおかげと言っていい。 彼女が自分を元の世界に返すことを望んだのなら、自分はそれに答えなければならない。 (まあ微妙だけど、楽しもうかな) 任務と言う事を何時しか忘れて。 億泰が子羊のソテーを食べてまた内臓が飛び出る。 笑うしか出来ない。ついに康一は吐いた。 フーゴは目を伏せてちまちまと仗助の料理を奪っている。 金はまたナランチャが払うことになっていた。 近いうちにバイトでもはじめようかとは思うが、ナランチャに出来るのかどうか。 フーゴも切れやすい。向いてなさ過ぎる。 というか、殆どナランチャ主催の食事会が終わりに向かう頃には、全員肌がつやつやであった。 パール・ジャムによって健康そのものになった彼らは、翌日何故か5時に起きてしまう事になった。 自分の分を払ったのは康一だけで、億泰、仗助はナランチャにおごってもらった。 借金1万円追加なりー。 仗助:借金6万円 億泰:借金12万円 ナランチャテメェ!こ、高校生の癖になんてパーティーを開きやがる!とお思いだろうが、パッショーネが開いたのと同じなのだ。金はパッショーネ……もとい、ミスタの給料なので。 こいつらどうするのだろうか。多すぎである。 返そうと思ったら返せるのかもしれないが、それはいつになるだろう。 気づけば、まだ3時。昼飯であんなに騒いでしまった。 また公園にれっつごーである。 初っ端から寝るつもりだった億泰はベンチに横たわって寝ていた。 「うえ、満腹だぜェ」 「僕は吐いたけどね……」 「……気にするなよ、康一。お前は唯一の良心なんだ」 他愛もない会話。 しかし、平穏な生活がここまで面白いとは思って居なかった。 思わず笑いが込み上げる。が、ルイズの顔が浮かぶとそれも打ち消された。 (むう……こうまでして心に纏わりつくか、ルイズの亡霊!) 何故か殺されているルイズ。生きてるよ! 「あっれ……露伴先生」 「あ、また会ったね………ヘブンズ・ド」 「ACT2!『ピタッ』!」 とりあえず動きを止める。 「む、何故邪魔するんだい、康一君?」 「いや、むやみやたらに人の心を覗き見るのはどうかと」 「ふーん、そうかい!いいじゃないか、ページを破ったりはしない」 「そういう問題じゃないんで……す……?」 ぶおっ、と黒く長い影がベンチに座っていたものたちを覆った。 露伴が振り向く。 場が静まり返った。その威圧感に圧倒されて。 「じょ……承太郎……さん……ッスかァーッ!?」 「久し振りだな……」 「………」 珍しく黙っている露伴。 決してACT2が「シーン」の文字を張っているわけではない。 「……来な」 くいくい、と指をこっちに動かし、後ろからぴょこっ、と少女が顔を出した。 恐る恐るだったようで、目元が少ししか見えないが―― その髪型も顔も身長も全て、ルイズそっくりである。この前見た少女だった。もう一度言うが髪は黒い。 こちらを見て何か驚いた様子だったが、平静を保っている。 承太郎と『約束』していたが、耐え切れずにヘブンズ・ドアーをかけてみた。 「おお!凄い、いいぞ、コレはネタになる!」 「……露伴。あの時『見るな』と言ったはずだが、もう忘れたのか?」 妙に気合の入った露伴の声。ノートの一箇所を見て興奮しているようだが。 それはともかく。 ナランチャは、頭の中に何か駆け巡るものがあるのを感じた。 そのナランチャ以外の人間は、胸元にいつの間にか入っていた紙切れを見ている。 「……ナランチャ。久し振りね」 ナランチャは 逃げ出した! 「逃げたぞ!追えーッ!」 その紙切れは――承太郎がわざわざ時を止めて忍ばせておいたもの。 『逃げる可能性がある 逃げた場合は全力で捕獲し、さもなくば……』 コレが内容である。まぁ!承太郎ったらいけない人ッ! 「やはり逃げたか」 「待ちなさいよッ!」 そこから出したか杖を振る少女。 ぼーん。もはやナランチャにとって慣れ親しんだ爆発が炸裂した。 しかし、走る、走る、走る。 足の疲労などもはやどうでもいい。何故か皆追いかけてくる。 ナランチャは承太郎の罠にまんまと引っかかっていた。 「うおぉ、空間を削り取るッ!」 「ゴミ箱が飛んできたぞォーッ!」 「間田、手伝え、サーフィスを使えぇ!」 「な、なんでこんな事になってるんですかーッ!?」 康一が悲鳴を上げる。 「ぐおおお!ザ・ハンド、ザ・ハンドッ!」 「わああぁッ!猫草が飛んできたーッ!」 「ギャース」 「あ、玉美……ってお前は役に立たんな」 「?」 「はえーぞアイツ!なんつー脚力だ!」 そこへ通りすがり。 散歩中のジョセフが仗助の目に留まった。 「おい、じじいッ!アイツ捕まえてくれェ!アンタのスタンドなら!」 「アイス腐らせてくれ?何を言っとるんじゃ、仗助」 「うおおお!役にたたねーッ!」 承太郎の目の脅しが後ろから迫る。 丸くなったと思ったら、宛ら若い頃の迫力。 頼りになると同時に、どうも逆らえない。 もうここまで来たら分かっていると思うが、少女は髪を染めたルイズだ。 あの時、ルイズが送り込まれたのは、日本。 日本は日本でも、承太郎の家の中に送り込まれてしまったのであった。 偶然、家に帰ってきていた承太郎に見つかり、身振り手振りで説明しようとするも、ハルケギニアの言葉が通じるはずもなく。 困った承太郎はヘブンズ・ドアーが使える露伴に協力を仰ごうと思ったが、海洋冒険家になっていた承太郎は、暫く海に出る予定だったので断念。 家に居た外国人の女性は、また家に帰ってこないのかと怒っていたが、それにルイズは困惑するしかなかった。 言葉が通じないと言うだけでも過酷だったが、かなりの歳月をかけた。 やっと承太郎が帰ってきたと思ったら、杜王町へ。 露伴に頼み込んで、ヘブンズ・ドアーにより、めでたくルイズと言葉が通じるようになったのはいいが。 ある少年に会いたい、と駄々をこねるので話に出てきたイタリアへ直行。パスポートなどはスピードワゴン財団が作成した。 しかし、広大なイタリアでただ1人の少年を見つけるなど殆ど無謀な事であり、ここでも財団の力を借りるわけにも行かず、日本に帰ってしばらく普通に過ごす。 そして、スピードワゴン財団がナランチャを見つけ、再び杜王町に来た、というなんとも長くややこしい道のりであった。 「くおのおおおッ!何で逃げるのよッ!こっちは何ヶ月掛けて見つけたと思ってんのーッ!」 「あ、邪魔ッ!」 「ぐはぁぁッ!?素潜りで変なダンジョンに出たと思ったら杜王町ハウスだとッ!?」 ディアボロ:ナランチャに吹っ飛ばされてロードローラー→ザ・ハンドで吸い寄せられたジョセフを喰らって死亡(ナランチャ気づかず) スコア:0 「ACT2ッ!」 「い、家に逃げ込むッ!」 流石にマンションのドアを壊したりはしないだろうと、自分の部屋に逃げ込み鍵を掛ける。 しかし、今日中は彼に平穏が訪れる事はない。 さっきまでレストランで食事をしていた頃が最早懐かしい。 「ジョ、ジョ、ジョルノォォォッ!?」 ジョルノにミスタ。 トリッシュは今日来てません。あの人元々はパッショーネじゃないし。差し入れに来るぐらいだし。 「あ、真面目に仕事してないようですから見に来ました。ホントだったみたいですね。援助減らします」 「え!じゃあ俺の給料も少しは戻る?」 「いえ、他の人の給料を少し増額しようと」 「うわああああッ!」 「ミスタ、近づかないでください」 顔を合わせに来たと言うのもあるが、フーゴがこっそり連絡していたのであった。真面目に仕事をしていない、と。 それを加えても、何故直々に来たか? 『スタンド使いは惹かれあう』。 (クソッ!俺の逃げ場はどこだッ!俺の側に近寄るんじゃねぇーッ!) 窓から飛び降りて下に居たディアボロをクッションにし逃走。 ディアボロ:死亡。 スコア・1400 「こんのぉーッ!まともに話せても居ないのにッ!逃げないでって言ってんでしょうがぁーッ!」 「くそぉッ!せっかく使い魔じゃなくなったかと思ってたのにッ!ルーンがまだあるなんてさッ!」 左手にある、ほのかに光を灯したルーンを見る。今まで気づかなかった。 「俺はまだ『ゼロの使い魔』なのかァーッ!」 「ど、どどどどういう意味よーッ!」 今日も杜王町は平和である。一人を除いて。 「……で」 「うん」 「お前も来ちゃった、と」 追いかけっこは終幕し、フーゴとナランチャ、そしてルイズだけがマンションの一室に座り込んでいる。 わけも分からないままフルボッコにされたナランチャは、絆創膏を腕に張りつつルイズの話を聞いていた。 髪が黒いので違和感がありまくりなのだが、あれだけ爆発を起こされては信じるしかない。 ナランチャは苦悩していた。 果たして喜ぶべきか、何をやってるのかと叱り飛ばすべきか。 ルイズは友達を捨てた。 それはナランチャにとっても許せる事ではなく、ルイズもあの日食が終わる一瞬の葛藤とは言え、苦渋の決断だった。 だが、逆に言えば「そこまでして自分を追いかけてきてくれた」のだ。 そんな少女を叱り飛ばすような勇気はナランチャにない。 「でもお前……勉強とかは」 「大丈夫。なんとか財団ってところから、コレ」 どさっ、とカバンの中から出たのは、大量の参考書と『進研ゼミ』であった。 「いや、ちょっとまて、進研ゼミて……(俺もやってるとは言え、お前がやるとは)」 「何よ。元々頭は良いのよ、私!」 いや、それは十分承知だが。 大学やら高校やらに通っていなければ、就職の際不利だ。フーゴに教え込まれた。 ルイズの話に出てきた『スピードワゴン財団』が「魔法が使える貴重な人物」ってことだけで手回しするとは言っているらしいが、いくらなんでも強引過ぎやしないか。 実は承太郎が『何故か放っておけない』という理由で財団にルイズへの協力を要請したのであるが。 「それに私がここに住めば、少なめだけどあの財団から援助が来るのよ」 「オーケー。交渉成立」 「「YEAAAHッ!!」」 「……何をやってるんですか」 よく考えれば、こいつら援助なかったら生きていけないんじゃないか? 頭の中に浮かんだそれはさておき、すかさず突っ込むフーゴ。 あ、とナランチャが素っ頓狂な声を出した。 「お前、窓んところ居た?」 「……?」 「……あー、そうか。俺の思い込みだ。気にすんな」 「……ふぅん、そんな思い込みするほど私のこと気にしてたんだ。ナランチャ」 「なぁッ!?馬鹿言ってんな!んな訳ないだろーが!」 「ま、大目に見といてあげるわ。逃げた事もね」 ナランチャは、目をそらして窓越しに空を見る。 夕焼けに染まっていた。 諦めたようなため息と共に、また視線を戻し、ただ黙って口元に笑みを浮かべた。 「なぁー、康一……」 「なんですか?」 「何でナランチャ、いきなりアイツとデートしてんの?」 仗助の問いに、康一は笑う。 億泰は後ろで泣いている。 「ふふ、違うよ。あれはただ『一緒に居るだけ』だって」 「それをデートって言うんじゃねぇのかよ……マジでスタンドも月まで吹っ飛ぶ衝撃だぜ……」 ルイズと一緒に自動販売機に手をかける。 両者共にサイダーを選んだ。ルイズがサイダーを選んだのは意外だ。 この世界に来てから飲んで、少し気に入ったらしい。 「……」 その光景を見つつ、珍しい笑顔を浮かべて、露伴は思い出したように虚空へとヘブンズ・ドアーをかける。 そして、何故か出てきた本に書き連ねていく。 「『サーヴァント・スミス 完』……そして、『望む限り今までのことは忘れない』。これでよし……と」 2人の笑顔を見届け、小さく笑い声を上げた後、露伴はナランチャとルイズをスケッチした紙を、空へ舞わせる。 その紙は、誘導されるように2人の間に落ちた。 『サーヴァント・スミス 完』
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【元ネタ】三国志 【CLASS】セイバー 【マスター】 【真名】徐庶 元直 【性別】男性 【身長・体重】171cm・64kg 【属性】中立・善 【ステータス】筋力B 耐久C 敏捷B 魔力B 幸運C 宝具B 【クラス別スキル】 対魔力:B 魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。 大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。 騎乗:C 正しい調教、調整が施されたものであれば万全に乗りこなせる。 【固有スキル】 軍師の忠言:B 軍師系サーヴァントに与えられるスキル。 状況を把握、分析することにより味方側に正しい助言を与えることができる。 ランクが上がれば上がるほどその助言の正しい確率は向上する。 軍師の指揮:A 軍師系サーヴァントに与えられるスキル。自己を含めた軍としての力を最大限に引き出す。 Aランクであれば、百戦錬磨の精鋭に等しい力を持つ。 無力の殻:A 任意のタイミングで、固有スキルが発動せず、能力値も落ち込み、サーヴァントとして感知されなくなる状態になれる。 曹操に仕えている間、軍師としての働きを見せなかったという逸話から。 医術:C+ 山の植物を調べ上げ緑色の薬“花萼丸”を開発し百姓を救い“花萼老祖”と呼ばれた、という民間伝承から医術スキルを有する。 なお、このスキルは現代を基準で比較するものではなく、サーヴァントの生きた時代の基準で判断するものとする。 【宝具】 『生門解錠・景門開通(はちもんきんさ、やぶれたり)』 ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:1~30 最大捕捉:300人 三国志演義において曹仁の八門金鎖の陣を破った逸話から得た、 自身や味方に相手の急所や勝負の勘所を悟らせる宝具。 発動から3ターンの間、対象に取った者に対する敵対的干渉が成功した場合、クリティカルとして扱われる。 『臥龍岡に伏龍あり(すいぎょのこうとなりうるや?)』 ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人 自身が現世から退去するのと引き換えに、マスターに英霊・諸葛孔明の召喚を試みさせることができる。 クラスは適正があるクラスからランダムに選択されるが、 諸葛孔明はマスターとなる人物が主足りえる器か討論し、納得しなければ召喚を拒否し、英霊の座に戻ってしまう。 孔明の召喚に失敗すれば徐庶が現世から消滅するだけの無意味な自滅となるリスクを孕む宝具。 【Weapon】 『撃剣』 【解説】 後漢、三国時代の政治家。 三国志演義では諸葛亮に先立って劉備軍に仕えた軍師として扱われる。 元々は侠(無法者)の類で撃剣の術に優れたが、 仲間の敵を討った後、狂人を装って逃亡するも役人に捕らえられてしまう。 仲間の助けで脱出した後は剣を捨てて学問に励んだ。 元は無法者だったために恐れられたが、徐庶は謙虚に振る舞い、経学に精通するようになったという。 その後、董卓の暴政を逃れて荊州に赴き、諸葛亮と出会う。 徐庶は諸葛亮を高く評価し、彼が管仲、楽毅に匹敵する人材だと自負するのを笑わなかったという。 荊州に(後に蜀漢を建国することとなる)劉備が現れると、彼に仕えた。 この際、三国志演義では劉備軍の軍師となって曹仁の軍勢を打ち破った逸話が記されるが、 正史では徐庶の活躍は見受けられない。 一方、正史・演義共通の功績として諸葛亮の推挙が挙げられ、 徐庶の言葉に興味を惹かれた劉備は、三顧の礼を以って諸葛亮を招聘し、自らの腹心として遇した。 曹操が大軍を率いて南下を開始し、老母が捕らえられたのを知ると 徐庶は孝心から劉備軍からの離脱を決意し、曹操の下に赴いた。 以後は曹操の下で働き、右中郎将・御史中丞にまで出世している。 しかし、後年の諸葛亮はこれでも彼の能力には不十分だったと思っていたようで「魏は取り分け人物が多いのだろうか」と嘆いている。 なお演義では曹操に仕えたのは魏の軍師・程イクが老母からの手紙を偽装して送った結果であり、 諸葛亮を推挙したのは自らが劉備軍を去る為の置き土産という形になっている。 なお、この事を知った老母は自害し、以後、曹操のために献策することはなかった。 諸葛亮ほどではないにしても民間では神仙化の伝承があり、 それによれば花岳山に隠居した後、仙人となり、また緑色の薬“花萼丸”によって百姓を救った。 この事から花萼老祖と呼ばれていた、という。
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【元ネタ】史実 【CLASS】キャスター 【マスター】 【真名】ハーシム・アル=ムカンナア 【性別】男性 【身長・体重】172cm・64kg 【属性】混沌・善 【ステータス】筋力C 耐久D 敏捷A 魔力A 幸運D 宝具EX 【クラス別スキル】 陣地作成:A 魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。 “神殿”に相当する“宮殿”を形成することが可能。 道具作成:B 魔力を帯びた器具を作成できる。 得意とするのは毒薬である。 気配遮断:A サーヴァントとしての気配を絶つ。 完全に気配を絶てば発見するのは不可能に近い。 【固有スキル】 魔術:A 中東圏とゾロアスター教に由来する魔術を習得。 魔術を使用し奇跡を起こせる預言者として、彼の信奉者たちから崇拝されていた。 高速詠唱:B 魔術詠唱を早める技術。 カリスマ:C- 軍団を指揮する天性の才能。 国家を運営することはできないが、志を共にする仲間たちとは死を厭わない強固な繋がりを持つ。 気配遮断との併用は不可。 二重召喚:B キャスターとアサシン、両方のクラス別スキルを獲得して現界する。 極一部のサーヴァントのみが持つ希少特性。 【宝具】 『白く覆え、美醜も死も(ムバイイダ・ムカンナア)』 ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人 預言者として自らの美しさを隠すために身につけたとされ、敵対者は醜さを隠すためのものだと糾弾した仮面。 装備した者の美醜を認識できなくさせ、付けた状態と外した状態で全く違うサーヴァントだと誤認させる事ができる。 さらに、この宝具を身につけた状態で死亡した場合、直接自身の消滅を目にした者を除いて、 自身が消滅していないという思考へと洗脳することができる。洗脳はAランク以上のディスペルで解除可能。 『神の化身は死すことなく、救世の為に現れり(タナースク・マフディー)』 ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人 アブー・ムスリムの死を否定し、彼はアダムやノアの生まれ変わりで神の化身である――と主張した逸話が宝具になったもの。 死亡した対象を蘇生させ、前世(と設定した)英霊の疑似サーヴァントとし、さらに霊格に応じた神性スキルを付与する。 ただし、前世(と設定した英霊)の霊格が高ければ高いほど、蘇生の成功率が下がる。 また、この宝具は一度しか使えない。 【解説】 アブー・ムスリムの部下であり、後に彼を神格化した教団を率いてアッバース朝に反乱を起こした人物。 その教団はゾロアスター教とイスラム教を混合したもので、自身は預言者を僭称した。 ムカンナアは、元々はハーシム・イブン・ハキムという名で、アッバース朝の重臣アブー・ムスリムに仕える暗殺者であったという。 その後の、アブー・ムスリム配下の部隊長となるが、主君マンスールによってアブー・ムスリムが粛清されてしまう。 この行為にアブー・ムスリムの支持者達は激怒し、反乱が相次いだが、 ハーシムはアブー・ムスリムの死を否定した宗教組織を形勢したという点が特異だった。 アブー・ムスリムはアダムやノアの生まれ変わりで神の化身であると主張し、 自らはその預言者となれ、とムハンマドやアリーから預言を受けたとして、 ムバイイダ(白衣を着る者の意)と呼ばれた教団を率いたのである。 この教団はゾロアスター教とイスラム教を混合したもので、 農民とトルコ人部族民を信奉者として糾合し、高度に組織化されていた。 しかし、アッバース朝が差し向けた軍隊の前に次第に敗色が濃厚となり、 死を覚悟したムカンナアは(自身ではなく)アブー・ムスリムが囚われてはいけない、として、服毒自殺した後に籠城していた宮殿に放火した。 ムカンナアの死後も教団は十二世紀まで存続し、預言者が再び戻ってくるのを待ちわびていたという。
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最初に・・・・私はそれでも冬将軍が好き。というわけで士郎鯖信長と言っていた人には最初から断っておきます。 ――真白の大地。 勝者なき戦の勝者。 厳冬の名を持つ将軍は、一人子供のように泣き続けていた―― 「恨むなら自分のバッドラックを恨みな、ボォイ。コイツでラストだ」 カウボーイの手にあった銃という武器は、人の限界をたやすく突破する。 ゆえに、銃に当てるか、避けるかという選択はない。 当たるか、当たらないか。人を超えるが故に、それは一方的な死でしかない。 どうしてそんなに簡単に人を殺せるのか。 どうしてそんなに簡単に人に死を押し付けるのか。 その人が俺であるか否かに関わらず、 俺は、それが、許せなかった。 だから、彼女がいつ現れたのか、それは覚えていない。 アサシンのスキルがそれを見せていないのかもしれない。 ただ、この眼に植えつけられたのは、 月光に氷の髪と氷のドレスを煌かせた少女が、俺を抱きしめるようにして庇う、その姿だった。 「召還に応じ、アサシンのサーヴァント、参上しました。 これより私は貴方の城砦となりましょう」 ――それは罪。 冬の娘、自然の触覚として生まれた彼女が、 人の世に関わる、それだけで罪―― 「衛宮君、聞いているの!? あなたのサーヴァントは英霊なんかじゃない。 もっと危険な、滅びの属性を持つ精霊なのよ!?」 遠坂の怒鳴り声が夜に響く。 ああ、不思議だ。 こうして怒っている様子をみれば、 普段の遠坂が猫をかぶっているだけなのが、良く理解できる。 それでも、遠坂は・・・ 「遠坂、おまえって、いい奴だな」 「なっ――っ!」 ――そう、私は英霊じゃない。 人として生まれた生き物ですらない。 人を殺す風、人を殺す雪―― 「二人とも、お話はおしまい? じゃあ、もう殺してもいいよね。 どうあがいても、私のサーヴァントには勝てないんだから。 だって、私のバーサーカーは、世界を滅す運命にある神の化身だもの」 「・・・まさか・・・ヴィシュヌのアヴァタール、カルキ!?」 ――だから、私は一人だけの将軍。 だれもいない白い大地で、 ただ一人泣き暮れる―― 「・・・これほどのものとは。 見事である、アサシンのサーヴァントよ」 「おい、お前! どうしてだよ! どうしてその槍を使わないんだ! 槍を使わないランサーなんて、意味が無いじゃないか!」 「我がマスターよ。騎士には勝利よりも重いものがあるのだ。 この槍こそ私の罪。 使ってはならぬ槍を使い、国を荒らした罪。 その罪を重ねることは、私には出来ない」 ――ならば、私は。 三度国を白く染め上げ、 敵味方無く死においやった私の罪は―― 「ひ、引っ付きすぎだ、アサシンっ」 「マスター。こうしないと、私の宝具による気配隠蔽の効果が及びません」 吐息のくすぐったさと、滑らかな肌に心臓が早鐘になる。 ええい、くそ。 気配を潜めるすぐ先では、罪を怖れぬ魔王の名を持つアーチャーと、 全てを守らんとするセイバーの戦いが始まろうとしている、こんな時だというのに。 ――それでも、私は罪を重ねる。 愛する大地を、愛する人を守りたいという罪を。 聖杯よ。願望器よ。どうか私という災厄を、消してください―― 「士郎とやら。 そちが聖杯を望まぬ? 先の聖杯戦争のことは、既にわらわは聞き及んでおる。 さぁ、万能の聖杯に今こそ祈るがいい。 あの、10年前の災厄を、今こそやりなおせるのじゃ」 ――ああ、マスター。 それを望んでください。それを望んでください。 災厄になど、意味は無いのですから―― 「俺は・・・俺は・・・・」
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【元ネタ】ドイツの伝承 【CLASS】アサシン 【マスター】 【真名】アルプ 【性別】男 【身長・体重】cm・kg 【属性】混沌・悪 【ステータス】筋力D 耐久D 敏捷B 魔力B 幸運D 宝具C 【クラス別スキル】 気配遮断:B 身の気配を消す能力。完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。 ただしアルプの場合、「相手が眠っている」状況ならばその限りではない 【固有スキル】 フェロモン:A 放出される魔力による異性への誘惑。アルプと対峙した女性は彼に対する強烈な恋愛感情を懐いてしまう 対魔力スキルで回避可能。対魔力を持っていなくても抵抗する意思を持っていれば、ある程度軽減することが出来る 魅惑の美声:B 人を惹き付ける魅了系スキル。 変化:B 文字通り「変身」する。 猫や鳥などの様々な動物の姿に自在に姿を変えられる 【宝具】 『御手を此方へ、御嬢様(ナイトメア・エスコート)』 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1~2 最大捕捉:1 相手の夢の世界へと入り込むことを可能とする宝具 夢の世界ではほぼ全てのことがアルプの思い通りとなり、彼の保有するスキルも1ランクアップする この世界に存在する「相手」は魔力や精気で形作られており、アルプはこの宝具の発動中「魔力と精気を吸収する」能力を得る アルプによって魔力・精気を根こそぎ奪われることは夢の世界での死を意味し、現実世界においても魂の抜け落ちた抜け殻となる 眠っている相手限定の暗殺用宝具である 『今宵、貴女の夢の中で(インバイト・キッス)』 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1~2 最大捕捉:1 相手の手の甲への口付け。相手は強力な睡魔に襲われてしまう。この睡魔は尋常ならざるものであり精神力での抵抗は意味を成さない 対魔力スキルによって抵抗は可能だが幸運を除いたステータスが1ランク低下してしまう 【Weapon】 無 【解説】 「アサシンのサーヴァント、アルプ。御手を拝借しても構いませんか?」 真名はドイツの伝承に登場する夢魔、「アルプ」。 華奢な体つきの優男で背中からは一般のイメージ通りのコウモリのような翼を生やしており飛行が可能。 非常に紳士的な性格で女性に対する礼儀作法や心遣いは正に「理想の男性像」といえるレベルであるが その内心は女性を「餌」としてしか捉えていない冷酷かつ残酷なものである 女性マスターや女性サーヴァントに対しては正に天敵といえる存在であり 余程の信念や絶対不変の愛を持っていないかぎり、彼のディナーとなることは必至である 直接的な戦闘力に関しては敏捷が高いだけで全く向いていない 夢魔故に魔力も平均以上の値はあるがそれを攻撃として転化する術を持たない 「宝具で相手を眠らせ、夢のなかで吸い殺す」しか勝利するパターンを持たないので何かしらの対策を取られると圧倒的に不利となる可能性を有する マタハリのような性特化のサーヴァントを目指して作成 「個」として登場するインキュバスが居るならばそちらの方が良いかもしれない
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Act.2 「質問よぉう。あなたが妾(わらわ)を呼んだマスターなのかしらぁ?」 光は消え、風も治まった魔法陣の中に立っていたのは、龍之介よりも幾分か年下に見える少女だった。 頭には宝冠を冠し、胸元と肩のはだけた純白のドレスを纏うその姿は、中世のお姫様を体現しているかのようだ。 高貴な装束とそれに見合う美しい容貌はしかし、それを見る者に可憐や美しいといった賛辞を贈らせない何かを発していた。 どこか灰色のようにくすんだ銀色の長髪。美しさよりも、不気味さが先に立ってしまうどこまでも白い肌。 その肌にさす薄らとした赤みは血の通っているそれではなく、まるで白い肌に何度となく“赤い液体”を浴びせているうちに、色が染みついたのではないかと、そんな突拍子もない考えを、妄想として一笑に付すことのできない、とにかく不気味な「赤」だった。 そんな突如現れた不気味な少女を前に、龍之介は言葉を失った。 と言っても彼は驚きや恐怖で絶句しているのでもなく、出てきた「悪魔」があまりに普通どころか、自分よりも背の低い女の子でお姫様だったことが意外すぎたのである。 人外の怪物や一目でそれとわかる異常性を携えているでもなく、恰好や口調などは少なからず奇抜ではあるが、タイムスリップしてきた昔の人と言われれば、そのほうが悪魔よりも現実的な回答の気さえする。 「ちょっとぉ、訊いているんだから答えなさいよねぇ。あんたが妾のマスターなのぅ?」 沈黙にしびれを切らしたのか、どう見ても龍之介より年下にしか見えない悪魔――であろう少女は上から目線で詰問する。 とりあえず龍之介は覚悟を決め、彼女に答える。 「えーと、マスターってのが何だかは分かんないけど、自分は雨生龍之介っす。 職業フリーター。趣味は人殺し全般。子供とか若い女とか好きです。最近は――」 「わかっているじゃなぁい!」 自己紹介を続ける龍之介の言葉は、唐突に発せられた白い少女の歓声で遮られた。 「そおぅよ、そおよ、そおよぅ! 若い女(コ)はイイわよぉぉ。特にその体を流れる血はぁこの世の何よりも素晴らしいわぁ! ああ~あぁ、素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしいわぁ……」 突然捲し立てるように喋りだした白い少女。 恍惚の境地に至ったような至福の笑みを浮かべ、焦点の合わない瞳は中空をさ迷い、遂には身振り手振りを交え、正確に聞き取れないほどの早口で弁舌をふるう白い少女に、龍之介は“あるもの”を思い出し、自分の後ろに転がっていた“それ”を見せた。 「あのー若い女が好きだってんなら、これなんかどうです?」 縛り上げられたこの家の少女が視界に入った途端、ピタリと動きを止める白い少女。 数秒の沈黙。そして―― 「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」 ――閑静な夜の住宅を引き裂く哄笑がこだました。 「いいわ、イいわ、イイわ、いいわよぉう! 見どころあるじゃなぁい、マスターァ。気に入ったワよぉ!!」 言いながら龍之介を押しのけ、縛り上げられながらも泣き叫び、必死にもがく少女の前に白い少女が立つ。 狂気を宿した赤い瞳と、狂喜の笑顔を張り付けたその貌は、正しく悪魔そのものだった。 「あ、気に入ってもらえました?」 龍之介が安堵の息を洩らそうとしたその時、異変は起きた。 白い少女――否、悪魔の周囲に赤い霧が立ち込め、それが見る見るうちに形を成しはじめた。 龍之介が呆然としている間に、赤い霧は幾つもの真っ赤な「凶器」へと姿を変える。 まるで生きた蛇のようにうねる2人挽き用の大きな鋸、先端の刃が鮫の乱杭歯を彷彿させる槍、何もない空中で激しく回転する直径50センチはあろう丸鋸、その他にも龍之介の見覚えがあるものや、見たことも使い方も分からない無数の凶器が、必死にもがく少女の上を漂う。 その様は死肉を啄む凶鳥たちが、獲物の息絶える瞬間を待ちながら宙を旋回しているそれに酷似していた。 だがこの凶鳥たちに自我は無い。ただ主の命にのみ従い、獲物に襲いかかりその命を奪う忠実な兵団だ。 「さ~あ、可愛い娘(こ)。その身を流れる血をぅ、妾のために捧げなさい!」 鋸歯の凶鳥たちが主の命を受け、一斉に獲物に喰らいつく。 鋸が高速で少女の体を蛇のようにはい回り、皮膚を、肉を刻む。 槍が肉と骨を貫通し、床にまでその刃を届かせ、少女の体の至る所を床に繋ぎ止める。 丸鋸は唸りをあげながら血肉をまき散らし、ゆっくりと少女の体に潜っていく。 彼らの刃に皮膚を裂かれ、肉を抉られ、骨を削られ、血と体液と絶叫をまき散らす少女。 だがその叫びはそれ以上の哄笑にかき消され、虚しく闇に消える。狂気と歓喜に満ちた哄笑の主が誰かは言うまでもない。 そして、医学的に見れば出血多量か激痛でショック死してもおかしくない状況でありながら、少女は未だ存命で悲鳴をあげ続けている。 だがそれ以上に不可思議な現象がこの場では起きていた。 全身を切り裂かれた少女から飛び散り流れた血は、ただの一滴も床や壁を赤く染めることなく、この惨劇の張本人である悪魔の全身に、まるで強力な磁石に引き寄せられる鉄屑のように吸い寄せられ、悪魔の肌を、そして全身を赤く染めていく。 そしてそれを悪魔は当然のように、両腕を広げ受け入れる。 ――どれ程時間が経っただろう。 室内に響いていた叫び声もいつしか途絶え、少女の体は元が何であったか、想像すらつかないズタボロの■■となり、血の臭いで満たされた地獄絵図に響くのは、血で染まった悪魔の高笑いだけだった。 ゆっくりと笑い声が小さくなり、完全に途絶えると同時に凶鳥たちは霧散し、全身から血を滴らせた悪魔が龍之介に向き直る。 「ウフフフゥ、やっぱり若い娘の血はいいわぁ。東洋人の血も、悪くはないわねぇ~。 それにしてもぉ、久しぶりだからつい何もしないで搾取しすぎてしまったわぁ。気をつけなくちゃぁねぇ? それよりもぉ、マスターァ。早く他の若い娘を調達してきてちょうだいなぁ?」 まるで先ほどまでの惨劇など無かったかのような言い様である。 そしてここまで言葉が出なかった龍之介が、ようやくその口を開けた。 「COOL!すげぇよ、マジすげぇ! あんなド派手な殺し方初めて見た!」 飛び跳ねて小躍りするほどの歓喜に身を震わせながら、殺人鬼は自分の呼んだ悪魔を、その殺し方を褒め称える。 あれ程までに強烈な生の断末魔を聞いたことなど、龍之介にはなかった。 殺し方も彼の想像さえしたことの無い、芸術の域にあり、龍之介は自分の世界に新たな地平が生まれ、その感動が全身を震わせていた。 その様を見て、悪魔は辺りを見回し、何かを考える素振りを見せた後、小躍りを続ける龍之介に提案した。 「ねぇえマスター? 妾に協力してくれるならぁ、妾もあなたの遊興に付き合ってもよくってよぉう? さっきのなんてぇ、妾の所有する道具の一つでしかないのですものぉ、まだまだあなたを楽しませることはできてよぉ」 「オーケイ、オーケイ! オレ何だって協力しちゃうぜ、何でも言ってくれ! その代わり、もっともっとド派手な殺し方を見せてくれ!」 ここに、第四次聖杯戦争最大のイレギュラーチームが誕生した。 死してなお、己が欲望を満たす為に凶行に手を染める怨霊と、彼女と出会ったことによりモチベーションをたて直した殺人鬼。 最凶最悪の2人組の進む道が、無辜なる犠牲者の血で染まることがここに決定された。 「あー、ところで君はなんて名前なの?」 ようやく肝心なところに気付いた龍之介が、問いかける。 「なぁにぃ? 妾が誰か知っていて呼んだんじゃぁなかったのぅ? まぁいいわぁ、妾はキャスターのぉサーヴァント、エリザベート・バートリーよぉ。 とりあえずキャスターとでも呼ぶといいわぁ」 エリザベート・バートリー。美貌で知られたハンガリー名門貴族の娘。 15歳の時にフィレンツ・ナダスディ伯爵と政略結婚するも、後年、自身の欲望のため若く美しい少女612人を殺害したという殺人者。 『血の伯爵夫人』の二つ名で後世に名を知らしめる彼女は正しく、悪魔と呼ぶに相応しい存在だった。 「オーケイ、キャスターちゃん! 何だかよくわかんないけど、よろしく頼むよ、マジで!」 龍之介の喜びに気をよくしたのか、新たな協力者を得て上機嫌なのか、サーヴァント・キャスターはにっこりと微笑んだ。 「えぇ~。お互い聖杯を求めてよろしくねぇマースタァ」 ∞ ∞ ∞ 召喚は成功した。招かれたサーヴァントのステータスがウェイバーの意識に流れ込む。 クラスはライダー。三大騎士クラスの括りからは外れ、基礎能力値は平均やや上と格別恵まれたステータスではないが、それでも十分に強力なサーヴァントだ。 人類史に聳え立つ2人の『覇王』。西はマケドニアの『征服王』と双璧を成す、東はモンゴルの『蹂躙王』チンギス・ハンこそが、ウェイバーの召喚に応じ、現界したサーヴァントだった。 ウェイバーは飛び上がって喝采をあげたかったが、召喚と同時に腰を抜かしていたため、実現は出来なかった。 白煙が薄れ、魔法陣の中に立つその姿が鮮明になる。 そして、自分のサーヴァントと目が合った瞬間、ウェイバーの全身が凍てついた。 それはウェイバーの知る“使い魔”――術者の傀儡としての存在でしかない人形とは、天と地ほども離れた存在だった。 そのサーヴァントは自分よりも遥かに強大な怪物であると本能で理解し、召喚成功の喜びで満たされていた体の熱が、一瞬で消え失せた。 狼のように鋭い眼光と琥珀色の瞳。 荘厳な顔と、薄らとはやした口髭と蓄えられた顎鬚から受ける印象は壮年の男性のそれだが、白髪は一切混じっておらず、精力に溢れた雰囲気は、見た目よりも若々しい印象を与える。 あるいはまだ若年の男性がその貫禄故に、実際よりも年配に見えるのか。 どちらとも受け取れる容貌の男は、白一色で統一されたモンゴル人特有の民族衣装、デールで身を包み、頭には防寒仕様の黒いモンゴル帽を被っている。 ウェイバーの眼前に立つ男の圧倒的な存在感は、肉体を得て現界したサーヴァントの迫力を存分に見せつけていた。 「この俺を呼んだのは貴様か、小僧」 男の第一声が雑木林に響く。低く、唸る獣のような獰猛さを感じさせる声で問われたそれに、ウェイバーの発した第一声は―― 「は?」 ――だった。 自分のサーヴァント、ライダーの迫力に圧倒され、意識が飛んでいたのだ。 「俺の言葉が分からぬか、小僧? この俺を呼んだのは貴様かと聞いている」 2度目の問いには、鋭い眼をさらに尖らせ、次に答えなければ殺すと言わんばかりの怒気が込められていた。 「そ――そう! そうです! ぼぼぼボクが、いやワタシが、ワタクシめが! オマエの、いえ、アナタのマスターの、ウ、ウェイバー・ベルベットです! いや、なのだッ! いや、なんです! とにかくマスターなんだあッ!!」 動転しながらも、精一杯の虚勢と嘘偽りない本心の入り混じった名乗りを上げるウェイバー。 果たしてそれに満足したのかどうかは不明だが、ライダーは怒気を収める。 「よし、契約とやらはこれではよかろう。 さて小僧、まずは俺と貴様で決めておかねばならんことがある」 「な、なんだよ……」 鋭い眼光をそのままに、ライダーがウェイバーに言う。 「この聖杯戦争において俺と貴様、どちらが差配を振るうかだ」 「は?」 ライダーの発言に、ウェイバーは先程と同じ返答――と呼べるかは不明だが――をした。 しかし先程の思考が止まっていた状態とは違い、今度は呆気に取られてのことだった。 腰は抜かしたままだが、とりあえず平素の思考を回復していたウェイバーは、ライダーの訊かれるまでもない問いに、すぐさま反論する。 「どっちがって。そんなのマスターである僕――じゃなくて、私に決まっているだろうが!」 語気を強め、そんなことも分からないのかという思いを込め、腰を抜かしたままのウェイバーが吠えた。 「それはつまり俺が貴様に従え、と?」 「当たり前だろ、私はお前のマスターだ。サーヴァントがマスターに従うのは当然だ。 だいたい、なんでそんな分かり切ったことを――」 憤懣をぶつけるウェイバーの眼前に、何処からともなく飛来した一本の矢が突き刺さり、彼の怒声は途切れた。 「……へ?」 暫し状況が理解できずに呆然とするウェイバー。 「……こ、これって――う、うわぁぁぁぁぁぁぁ! て、敵か!?」 漸く理解し、慌てて地面に突き刺さった矢から離れようと、腰を抜かしたまま後ずさるウェイバーの背中が何かにぶつかる。 感触と音からして、具足を纏った誰かの脚のように感じたウェイバーが恐る恐る振り返ると、そこには片手に槍を持ち、東洋風の鎧で全身を覆った何者かが立っていた。 「ひいぃぃぃぃぃっ!!!」 再び慌てて逃げようとしたウェイバーは、その時になって気づく。 いつの間にか、自分が今ぶつかった者と同じような恰好をした集団が、自分とライダーを取り囲んでいることに。 10や20どころの数ではない。ネズミ一匹逃げる隙間も無い程に、槍や剣や弓などを構えた人の壁がいつの間にか出来ており、うち何人かは確実にウェイバーを標的として武器を構えていた。 もはや疑うまでも無く、先の矢はこの集団――否、兵団の誰かが放ったものだ。 「あ、あぁぁぁぁぁぁぁ……」 恐怖で竦み上がり、呂律もまともに回らないウェイバーに、何事も無いかのように落ち着き払った態度のライダーが声をかけた。 「残念だったな、小僧。貴様はここで終わりだ」 「な、なにを――」 ――言ってるんだ。と問う前に、ライダーはゆっくりとウェイバーに近づき、間近で腰を抜かす彼を見下ろした。 その目に慈悲や優しさなどといった感情は一切含まれておらず、冷酷非情な殺意だけが双眸に滾っていた。 生まれて初めて浴びせられる「殺意」にウェイバーの全身が硬直する。瞬きも呼吸も忘れ只々恐怖に震えるウェイバーにライダーが言う。 「小僧、たかだかマスターであるという事だけでこの俺が跪くとでも思ったか? 俺は小間使でも騎士でもなければ、杯1つのために魔術師に頭を垂れるそこいらのサーヴァントとも違う。 貴様の前にいるのは『蹂躙王』チンギス・ハンだぞ? この俺を従えようなどとほざく者は、何者であれ俺は敵として扱う。そして敵ならば速やかに殺し尽くすのが俺のやり方だ。 まさかその程度の事も弁えず俺を呼んだ――などとは言うまい? 魔術師よ」 「――あ、あぁ……」 蛇に睨まれた蛙のように怯え竦むウェイバー。 自分を囲む兵団がウェイバーにのみ敵意を向けていることから、彼らがライダーの支配下にあることは明らかだ。 どう足掻いたところで逃げることは叶わず、立ち向かう事など考える事すら愚かしい。 令呪の事も、今のウェイバーの頭には無い。 命がけで戦いに挑む覚悟はしてきたウェイバーだが、まさか自分が召喚したサーヴァントにいきなり殺されるとは夢想さえしていなかった。 しかも相手は人間よりも遥かに力を持った英霊。それも屍山血河を山と築き、血の覇道を突き進んだ『蹂躙王』。あまりにも相手が悪すぎる。 ウェイバーの本能が避けようの無い死を告げる。 だが、そんな不可避の運命に待ったをかけたのは、以外にもライダー本人だった。 「だがまぁ、貴様には不完全だが俺を現世へと再臨させた功績がある。 くわえてサーヴァントという楔に繋がれた今の俺では、マスターである貴様を殺すと今後が少々面倒だ。 故に一度だけ慈悲を与えてやろう。この俺が慈悲を与えるなど滅多に無いぞ? そして2度目の慈悲は無い。慎重に考えて口を開けよ、小僧。 この聖杯戦争、俺と貴様のどちらが差配を振るう?」 悪辣かつ獰猛な笑みを浮かべたライダーが問う。 ウェイバーの出した答えは―― ∞ ∞ ∞ 深夜、“それ”は何処からともなく、遠坂邸の門前に現れた。 まるで闇の中から生まれ出たかのように自然に夜闇に溶け込み、間近で見ても生命の鼓動を感じさせない幽鬼のごとき“それ”は、全身を黒いボロボロのローブで包んでおり、身体つきからかろうじて男だろうと見てとれる。 腰には二本の曲刀を下げ、ローブの奥に覗く顔には白い髑髏の仮面をつけた男の姿は、見るからに『山の翁』の名を冠するアサシンのそれだった。 突如、アサシンらしき男は10メートル近い高さを予備動作なしで跳躍し、遠坂邸の領空へとその身を躍らせた。 疑うまでもなく、このアサシンらしき男は遠坂邸の襲撃を目的として現れたのだ。 上空10メートルの地点でローブの下から腕を伸ばした暗殺者は、その手の先から複数の投擲用のナイフを投げ放った。 飛刃の先には、いずれも遠坂時臣が聖杯戦争に備え張り巡らせた、探知や防衛の結界が処置されていたが、それら全てが投げ放たれた刃により破壊され、無力化した。 そして何の危険も無くなった敷地の一角に暗殺者はいとも簡単に侵入し、そのまま屋敷を目指し広い庭を疾走する。 その間には当然ながら他の結界が張られているが、それらは全て本来の役割を果たす前に、暗殺者により放たれた刃の前に無力化されていく。 これらの結界は、魔力を備えた者ならば人間だろうが使い魔だろうが、主たる時臣の許可なく踏み込めば無事には済まない仕組みであり、魔力の塊であるサーヴァントともなれば尚更だ。 実体、霊体を問わず、察知されずに遠坂邸の結界を潜り抜けるのは、まず不可能であろう。 しかし、察知されないことや潜り抜けることを前提としなければ、その限りではない。 単純な話、結界をものともしない守りで突き進むなり、結界そのものを破壊すれば脅威は無くなる。 そして暗殺者は後者の方法をとった。 勿論ここまで乱暴な手段で無力化すれば、相手には間違いなく気づかれる。 潜り抜けるのではなく破壊してとなれば、その異常に気付かない魔術師はいない。 だが暗殺者はそんなことなど念頭に無いのか、または気付かれても構わないかのように、あるいはそれが目的だとでも言わんばかりに、ひたすら派手に遠坂邸の結界を破壊していく。 暗殺者の前に結界は次々と敗北し、その疾走を阻むものはおらず、いよいよ屋敷の内部に暗殺者が入り込もうとしたその直前――不意に暗殺者が止まった。 理由は明解。遠坂邸の入り口と暗殺者の間に、霊体から実体化したサーヴァントが出現したからだ。 現れたサーヴァントは眉目秀麗を地で行く青年だった。 背中の中程まで伸びた金髪は夜の闇を切り裂かんばかりに輝かしく、澄んだ海のように蒼い瞳は暗闇の中でもその輝きを損なっていない。 そして当世風の服装を夜風にたなびかせ、まるで来客を迎えるように悠々とした態度で青年が暗殺者の前に立ちはだかった。 およそ10メートルの距離をはさんで、無言のまま視線を送る暗殺者に視線を向け、青年が口を開く。 「セイバーだ。お前は?」 この時、遠坂邸を使い魔で見張っていたマスターたちは、使い魔越しであるにも拘らず、誰もがその威容に戦慄いた。 存在するだけで周囲の視線を釘づけにするその姿。 現代の人間では纏うことのできない雰囲気は、数多の熾烈な戦いを身一つで潜り抜けた戦士だけが持つことを許されたそれであり、見るだけで分かる人とは次元の違う強さ。 この青年こそが七騎のサーヴァントの中で、最優にして最強の呼び声高き剣の英霊、セイバーのサーヴァントだった。 それまで動きを止めていた暗殺者は、やおら投擲用のナイフを捨てると腰に差していた2本の曲刀を抜き、セイバーに向かって構えた。 対するセイバーは未だに手ぶら。まさか剣の英霊でありながら徒手空拳で戦うとでもいうのだろうか。 「真名を名乗れとは言わん。が、クラスぐらい明かしたらどうだ?」 「……」 セイバーが問いを投げても暗殺者は何も答えず、構えた姿勢を崩さない。 「それにしても、ずいぶん派手に荒らしてくれたな」 相手との会話を諦めたのか、セイバーは辺りを見回しながら、ゆっくりとした足取りで暗殺者に近づいていく。 それはありえないほどの無防備さだった。 武器を構えた謎の敵を相手に、セイバーは手ぶらであまつさえ、完全に敵から視線と注意を逸らしている。 既に両者の距離は5メートルを切っており、セイバーがどれほどの猛者であったとしても、これは致命的な隙だった。 「!」 無論その隙を暗殺者は容赦無く衝いた。 5メートルの距離など、彼にとっては一足で踏み込める間合いでしかなく、例え誘いやカウンター狙いの罠であったとしても、セイバーが反応するよりも早く暗殺者はセイバーに刃を突き立てることが可能だった。 一瞬にして間合いが詰まる。 万全の攻撃態勢を整えての暗殺者と、手ぶらで視線さえも逸れているセイバー。 セイバーの慢心が過ぎたのか、実力を低く見積もり過ぎたのか、どちらにしても決定的に必殺の先手を暗殺者は取った。 右手の曲刀がセイバーの喉笛に振るわれ、左手の曲刀はセイバーの心臓に突き出された。 瞬きひとつしている間に事は終わっており、暗殺者と使い魔越しにこの光景を見ていた誰もが、セイバーの敗北を不可避の未来と確信した。 只1人、セイバーのサーヴァントを除いて。 何かが砕ける音がして、無数の金属片が宙を舞い地に落ちる。それは一瞬前まで、曲刀の刀身だったものだった。 セイバーの喉笛を切り裂き、心臓を貫くはずだった二本の曲刀は、どちらもセイバーに刃が当たった瞬間、刀身が粉々に砕け散ってしまった。 「!?」 声こそ発しなかったが、暗殺者の驚愕は明らかだ。セイバーの姿に変化は見られない。 血を流すどころか掠り傷1つ無い状態も、未だ自分を斬りつけた相手を見ていないことも。 セイバーのクラスらしく、自身の剣で曲刀を切ったのでも、鎧や盾などの防具で身を守ったのでもない。 まるで桁違いの硬度を持った“何か”に当たった剣が、比べるのも愚かしい脆さを曝け出したかのように、その刀身を崩したのである。 例え堅牢な鎧や巨大な岩に曲刀を振るったとしても、錆びてもいない刀身がバラバラになるなど有り得ない。 まるでガラス細工を鋼鉄の壁にでも叩き付けたかのような有様だ。 セイバーは如何なる手段を以て刃を防いだのか、それを知るのは当人だけであった。 「終わりか?」 まるで何事も無かったかのように、セイバーの視線が暗殺者に向けられる。 その瞳には明確な闘気が込められており、鋭い眼光こそが彼が攻勢に転じることを如実にものがたっていた。 慌てて後退する暗殺者。ただ相手から離れるためだけに全ての力を使った必死の逃亡。 だが―― 「マスターからの指示だ。お前は逃がさん」 全身全霊で逃亡する暗殺者の正面に、涼しい顔のままセイバーが一瞬にして肉薄する。セイバーが本気を出していないことは明らかだ。 セイバーと自分の格の違いをこの時になって理解した暗殺者は、次の瞬間自分の身に何が起きたのかを認識できぬまま敗北した。 ∞ ∞ ∞ セイバーの拳が暗殺者の頭部を粉砕し、首より上を喪失した死体が崩れ落ちる。 事態の収束を確認した時臣は、ゆっくりと椅子に腰掛け、手元のグラスを取ってワインを呷った。 己の庭を好き放題に荒らしてくれた賊にはセイバーを討伐向かわせ、その命で償いをさせた。 結界を破壊されたことは業腹だが、日中を費やせば大部分の修繕は可能であり、2日もあれば同じ規模の結界を張り直せる。 こうも早くセイバーの姿を晒すことになってしまったのは誤算だったが、得体の知れぬ守りと圧倒的な実力を他のマスターたちに見せつけたことで、今後しばらくは無闇に挑んでくる敵もいないだろう。 そのあまりに有名な伝承故に、「弱点」を看破されやすいセイバーの真名が早期に知られることだけは何としても避けたい時臣は、あえて『剣を使わずに賊を討て』と、セイバーに命じた。 反論も覚悟しての命令だったが、セイバーはすんなりと了承し、見事にそれを成し遂げた。 これでセイバーが少々の無理でも、マスターである自分の指示には従うことが確かめられた。 結果的に失うモノより得るモノが多く、自分に有利な状況が出来上がったと結論しほくそ笑む時臣の下に、セイバーが帰還した。 「賊は仕留めた」 室内に霊体で入ったセイバーが実体化し、簡潔に報告する。 「ご苦労、手並みは見せてもらった。さすがは北欧最強の戦士と讃えられるだけのことはある。実に見事だったよ」 「痛み入る、マスター」 時臣の賛辞に会釈程度に頭を下げるセイバー。 マスターに対するサーヴァント、としては人によっては少々礼を欠いた態度とも取れるが、時臣は特に気にしていなかった。 そも、このセイバーは騎士よりも戦士に近い英霊であり、『騎士道』とは無縁の北欧神話の出であれば、これでも十分すぎる――というのが、現在の時臣の認識だ。まして今しがた十二分な成果を出してきたとなれば、些細な事で責める必要はない。 「それで、賊について何か分かったことはあるかね?」 「単純に見ただけなら、あれはアサシンという事になるが……」 「それはないな」 反応を窺うように『アサシン』の名を口にしたセイバーの意見を、時臣は否定する。 「先にも話したが、アサシンのマスターは私の弟子で、表向きは敵対しているが、実際は協力関係にある。我が家に襲撃を掛けることはない」 「その弟子が裏切ったということは?」 「それもない。アサシンの召喚には私も立ち会い、その姿を確認している。 今夜の賊は明らかに違う存在だった。 おそらくこちらの事情を知らぬ何者かが、アサシンに見立てた偽物を使って我が工房を襲撃したのだろう。 そんな芸当ができるとなると、相手はおそらくキャスターだな」 「だがマスターにサーヴァントの偽物は通用しないのでは?」 そう、聖杯戦争に参加しているマスターにはサーヴァントのステータスを読み取る能力が与えられている。 いかに精巧な偽物であろうと、マスターの目を誤魔化すなど不可能であり、その点が時臣も腑に落ちないところだった。 「おそらくキャスターとそのマスターは、独力で勝ち残ることが難しいと考え、 最後には戦うことになる相手と同盟を組むより、アサシンが敗退したと思わせ守りに隙ができたマスターを、本物のアサシンが狙って敵を減らしてくれるとでも安易に考え、こんな芝居を打ったのだろう。 逆に、対魔力スキルの無いアサシンならば、独力でも倒せる自信はあるという事か…… あの偽物を見た中には、アサシンはステータスを隠蔽する能力を有していたなどと深読みし、積極的に動き出す者もいるかもしれない」 時臣の考えをセイバーが黙って聞き続ける。 「とはいえ、敵にどんな思惑があれ私たちには無意味なこと、あれこれ考えても詮無いことだ」 自分たちには影響も問題も無いと結論する時臣。 セイバーは変わらず何も言わないが、時臣の考えを否定するつもりもないらしく、無言で時臣の方針に従う意を示す。 その姿を見て、アサシンについて深く詮索されないうちに時臣は話を切り上げにかかった。 「予定外の事態ではあったが、戦局に影響はない。我々は引き続き静観を続け、サーヴァントの数が絞られたら、君の力を存分に振るってもらう。 とりあえず今夜のところは屋敷の見張りを頼む」 「承知した」 話が終わったと判断し、部屋を出ようとするセイバーの背中に時臣は気になっていたことを訊いた。 「ときにセイバー、その服はどうかね?」 「俺は気に入っている」 足を止めて振り返り、セイバーが答える。 服とはもちろん、今セイバーが纏っている当世風の衣装のことだ。 召喚された時、セイバーの姿はその美貌に反し酷いものだった。 装着している鎧は、かつては白銀色の立派なものだったのだろうが、今はほとんどが壊れ、砕け、罅割れ、色はくすんだ茶色がこびりついて輝きは完全に失われていた。下半身の元は具足だったと思えるものも、鎧と同様の有様だった。 無論それはセイバーの激闘を物語るものであり、この上ない勲章でもあるのは、時臣も理解できる。 くわえて、セイバーの『宝具』があれば鎧など必要性は無くなる。 が、「常に余裕をもって優雅たれ」という家訓を誰よりも重んじている時臣には、遠坂の威信を賭けて召喚したサーヴァントを、あまりにみすぼらしい格好で敵の前に行かせることは出来なかった。 結果、時臣は急ぎ璃正神父を通してセイバーの服を手配してもらい、幾つか届いた中からセイバーに好きなものを選ばせたると、彼は見事にそれを着こなして見せた。 おまけに何の神秘も魔力も無い現代の服装をしていながら、攻撃が通じないセイバーの存在は傍から見ればさぞ不可解で脅威だろう。 「それは何より、私としても用意した甲斐があった。 引き留めて済まなかった、見張りに向かってくれ。 もしまた戦闘になるようなら、引き続き極力剣は使わずに事は運んでくれ。 君の実力を疑うわけではないが、真名が敵に知れるリスクは少ない方がいい」 「了解した。 俺は必ず聖杯を手にしなければならない、その戦略が必勝に繋がるならば俺はどんな命令にも従う。 この機会を与えてくれたマスターには感謝している。必ず聖杯をマスターの手にも約束する」 この時ばかりは恭しく頭を下げるセイバー。その姿に時臣は満足気に頷く。 セイバーが聖杯を求める理由を知っている時臣は、彼をサーヴァントとして確かに信用していた。 セイバーの伝承を知る者ならば、誰もが嘘は無いと納得する理由で、真摯に万能の願望器を必要としている。 そのため時臣の命には服従しているし、令呪もあるマスターを裏切る可能性は低いと時臣は確信しているのだ。 蒼い瞳に灼熱の決意を燃やすセイバーの姿は、この上なく頼もしい存在だった。 「無論だ。私も一族の悲願を遂げるためにも、敗北は許されない。君のことは頼りにさせてもらうよ、セイバー」 かくして、第四次聖杯戦争の戦端は切って落とされた。 ステータス情報 【クラス】セイバー 【マスター】遠坂時臣 【真名】??? 【性別】男性 【属性】混沌・中庸 【ステータス】筋力A 耐久B+ 敏捷A 魔力B 幸運E 宝具A++ 【クラス別スキル】対魔力:A 騎乗:A 【クラス】ランサー 【マスター】??? 【真名】??? 【性別】??? 【属性】??? 【ステータス】??? 【クラス別スキル】??? 【クラス】アーチャー 【マスター】??? 【真名】??? 【性別】??? 【属性】??? 【ステータス】??? 【クラス別スキル】??? 【クラス】ライダー 【マスター】ウェイバー・ベルベット 【真名】チンギス・ハン 【性別】男性 【属性】混沌・中庸 【ステータス】筋力C 耐久C 敏捷B 魔力D 幸運A 宝具A+ 【クラス別スキル】対魔力:D 騎乗A+ 【クラス】キャスター 【マスター】雨生龍之介 【真名】エリザベート・バートリー 【性別】女性 【属性】混沌・悪 【ステータス】筋力E 耐久E 敏捷E 魔力B 幸運C 宝具C 【クラス別スキル】陣地作成D+ 道具作成D+ 【クラス】アサシン 【マスター】言峰綺礼 【真名】??? 【性別】??? 【属性】??? 【ステータス】??? 【クラス別スキル】??? 【クラス】バーサーカー 【マスター】??? 【真名】??? 【性別】??? 【属性】??? 【ステータス】??? 【クラス別スキル】???